「金融変革」から「四方良しへ」アブラハム グループ創業者高岡壮一郎さん

西村創一朗
NOW OR NEVER
Published in
13 min readApr 21, 2015

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アブラハムグループ創業者高岡壮一郎さん

お金を払ってでも読みたいと思うピッカーさんのコメントもあります。高岡壮一郎さん(アブラハム社長)です。 — -サイボウズ式:NewsPicksは真の経済メディアになれるんですか?より引用

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なんと…!ご快諾頂けただけでなく、ぼくのブログも読んで下さっていただなんて。 なんて素晴らしい方なんだ…生きてて良かった。 というワケで都内某所でランチをしてきました。

剣道に明け暮れること12年間。大学ではバックパッカーに。

ーー今日はお時間頂きありがとうございます。東京大学卒業後は三井物産に入社されて、その後アブラハム・グループ・ホールディングスを創業された高岡さんですが、学生時代はどんな方だったんですか?

学生時代は長期休みの旅にインドや東南アジア、メキシコなどの発展途上国に行くのが大好きなバックパッカーでしたね。先進国に生まれた者として、途上国の人の役に立ちたいと外務省に行こうと思った時期もあり、公務員試験予備校に行って同級生と一緒に勉強をしてました。

小さい頃はとにかく剣道に熱中していました。剣道以外の記憶はほとんどないくらい(笑)。トップを目指して剣道に打ち込んでいて、でも、県ですら一番になれなくて。1番になるまで諦めないぞ!と思ってやり続けていたら、気が付けば、小1から高3まで12年間が経っていた感じです。 剣道を通じて学んだ「正々堂々と戦うこと」や、「結果を出すまで諦めないこと」は、今の生き方にもつながっているかもしれません。

なぜ三井物産に入社したのか?

ーーいろんな選択肢があった中で、ファーストキャリアとして商社、三井物産を選ばれたのはなぜですか?

バックパッカーで世界中を巡っていたこともあり、グローバルにビジネスを展開しているグローバルカンパニーに行きたいと思うようになりました。

調べると、日本には「総合商社」という世界中を見てもユニークな業態があり、SOGO-Syoshaという英単語になっている。そこで「挑戦と創造」を掲げる三井物産に入社しました。

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三井物産新卒採用パンフレット[/caption]

入社後はビジネススクールのような知識を身につけたいという思いを伝えたところ、MBAホルダーの先輩が多い海外投資の審査部門へ配属され、みっちり基本動作を叩き込まれました。

その後、優秀な先輩方が次々と異動をしていた情報産業本部に3年目に異動させて頂きました。米国企業と提携したIT事業立ち上げ、数百億円規模のM&Aプロジェクトやベンチャー投資に携わりました。

そうだ、起業しよう。

ーー非常に仕事も充実していて、順風満帆な商社ライフを送られていたと思うのですが、なぜ起業されたんですか?

高岡: 明治以来、増え続ける日本の人口を支えながら成長してきた総合商社ですが、2005年から日本の人口減少が始まる構造転換に直面していました。そしてインターネット化とグローバル化で、川上から川下へのパワー・シフトが進行していました。

思えば、三井物産も140年前の創業時は18名のベンチャーでした。創業者が鎖国から開国へという変化を機会と捉えたわけです。ならば私もと、この時代の転換点を機会として、新しい時代の日本を支えるコングロマリット・グループを創りたいと思い、個人の自己実現を支援する『知恵の総合商社を創ろう』と考えました。

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アブラハム・グループ・ホールディングスの創業時のHP(2005)

アブラハム・グループ・ホールディングスの創業時のHP(2005)[/caption]

起業資金に1億円を貯めた。

ーー起業されると決めてから会社を辞めるまで、結構大変じゃなかったですか?

高岡:30歳の時に起業しようと決意し、それから創業資金をひねり出しました。

起業後の事業をイメージした上で、

1 「お客様(個人)の能力をパワーアップするものであること」

2 「既存の大手企業の非合理性を突き、真似できないもの」

という軸で検討した結果、当時の株式市場における機関投資家(プロ)と個人投資家(アマ)の知識やノウハウの圧倒的な差に注目しました。当時の証券業界では個人投資家が軽んじられており、個人投資家の知識レベルが低く非合理的であることこそが、証券会社やプロの収益機会と認識されていたのです。

そこで、機関投資家(プロ)の間では基本となっているDiscounted Cash Flow法等によるValuationを元にした投資分析ノウハウを月額26万円でオンライン販売しました。

当時は株価算定の専門家に頼むと数百万円もかかるものが割安で買えるとあって、価値が分かる富裕層が殺到。読めば読むほど、投資スキルが上がるとあって、たちまち大人気となり1億円以上の起業資金が貯まりました。同時に、富裕層向け事業で起業するための顧客基盤を手に入れました。

ワンルームマンションの一室からスタート

ーーそして、満を持して会社を創業されたのですね。

高岡:2005年に仲間5人でアブラハム・グループ・ホールディングス株式会社を築26年のワンルーム・マンションの一室で創業しました。コピー機をリースしようとしたら与信が無いため断られたり、ボロいオフィスを見てアルバイトに逃げられたりもしましたが、創業3年ほど1日16時間、土日も無く働きました。

数は少ないながらも日本経済に与える影響は大きい富裕層をターゲットにし、各種専門情報サービスを提供して、初年度から黒字になりました。それを見た大手証券会社から株式上場を持ちかけられるようになりました。

富裕層がアブラハムに集まるようになると、そのトレンドを見たベンチャー・キャピタル等が集まりだし、当時としては異例の5億円を資金調達できました。それを初期投資に回し、金融資産1億円以上の富裕層限定のコミュニティサービス「YUCASEE(ゆかし)」を立ち上げました。

「富裕層同士がネットワークを築いて、非公開の情報やノウハウを共有したい」というニーズにはまり、紹介が紹介を呼び、会員が増えていき、日本で唯一の富裕層プラットフォームになり、海外の新聞でも大きく取り上げられました。

「日本の金融に変革を!」 そして予期せぬ、業務停止処分へ

その運営を通じて、「日本の証券会社に満足していない。海外の優良商品をダイレクトに買いたい」との強いニーズが富裕層にあることが分かりました。

そこで、金融商品取引法という新しい法律が登場したことを機会に捉えて、「国内の大手証券会社をすっ飛ばして、個人投資家がダイレクトに海外金融商品を入手できる仕組み」を2008年に構築しました。

それがアブラハム・プライベートバンクの投資助言事業です。このグローバルな仕組みを発展させるために、香港で証券会社も立ち上げました。

これが個人投資家に非常に受けて、アブラハム・プライベートバンクの助言契約額は短期間で累計877億円以上に達しました。

私は自分の仕事が日本の金融を開国に導き、社会を良くしていると心から思っていまして、社員一丸となって熱く仕事に燃えていました。富裕層だけではなく、一般の人にもこのグローバルな投資チャンスを提供したいと考え、「いつかはゆかし」というブランドで「これからの資産形成層30代・40代」もターゲットにしました。

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「新しいビジネスで日本に変革を」と日経新聞に全面広告(2013)

「新しいビジネスで日本に変革を」と日経新聞に全面広告(2013)[/caption]

そんな中、2013年10月、突然金融庁から6か月間の業務停止命令が出されたのです。

個人投資家が日本の証券会社を中抜きして、海外の金融商品を直接買えるビジネス・モデルは、個人投資家から見ると流通コストが安くなる一方、当然ですが既存の流通業者である証券会社の利益を減らします。

そこで、「金融商品を買う場合は、日本の証券会社を通す」という金融規制に抵触していると解釈され、日本の金融行政・秩序を大きく揺るがすものとして、行政処分で業務停止となったわけです。

私としては複数の法律事務所に相談した上で5年以上も進めてきた事業です。お客様である個人投資家は喜んでくださっています。金融行政は個人投資家の利益を守るものだと思っていました。競合企業からの嫌がらせなどはありましたが、行政処分なんてあるわけないと思っていました。

「大手投資助言会社アブラハムが業務停止へ」と日経新聞が報じましたが、何かの間違いと思い「誤報です」とリリースを出した矢先に、本当に処分勧告を受けました。

行政処分の報道の日、深夜になっても自宅に帰らない私。文字通り帰らぬ人になったのではと、家族は心配したそうです。「もう待ってられない」と探しに行こうと玄関のドアを開けたら、そこに私が倒れて寝ていたそうです。

当時、アブラハム・プライベートバンクはオンライン集客をしており、A/Bテストをしながら広告効果のPDCAを高速で回していました。つまり30代・40代のお客様の好みを忠実に反映して広告表現をどんどん進化させていったのですが、それが金融業界の中で非常に目立つようになりました。一般的な金融機関と比較してインパクトがありすぎるだけに、世の中から見ると、とても怪しいわけです。

その土壌の上で、業務停止処分です。あの怪しい会社が何をやらかした?という騒ぎになり、NHKや、朝の「めざましテレビ」にまで報道されました。ネットでは、当社に関する誤った情報が拡散してしまいました。お客様には大変申し訳ないことをしました。

それらの誤った情報に対して反論したい気持ちもありましたし、マスコミも真相を知りたいとのことで多数の取材依頼も頂戴しましたが、当時は我慢して何も語らず、行政の指示に従い一心不乱に業務改善にだけ取り組みました。当時の真相を公式HPに、しかもひっそりと発表したのは、すべてを解決した1年半以上たってからです。

国の視点も入れて、「四方良し」を目指そう。

ーー会社の存続が危ぶまれる事態だったかと思うのですが、どうやって乗り越えられたのですか?

高岡: 業務停止処分を受けて仕事も収入も無くなりました。数千人の優良顧客基盤を狙った外資金融から買収提案が来ました。それに乗るのが一番楽な道でした。ですが、ここでアブラハムを終わらせたら、一緒に戦ってくれた社員の名誉はどうなるのか。「1度でも逃げた人間には、誰もついてこない」というのが私の信条です。

再起を誓い、社員を1人も解雇せずに耐えました。結果、5.5億円ほどお金を吐き出すことになりましたが、意気に感じてくれた社員達が奮闘したおかげで、9割以上のお客様は離れることなく残ってくれた上で、無事にアブラハム・プライベートバンクは2014年4月に業務再開を果たすことができたのです。

行政に事業を止められて痛感したのは、「三方よしでは不十分。四方よしを目指すべき。」ということでした。

以前は、「顧客良し、世間良し、自分良し」の「三方良し」を目指していました。アブラハム・プライベートバンクは個人投資家のグローバル化を支援したわけです。でも国側からすると、それにメリットはあるけどもデメリットもあり、既存の業界秩序もあるわけです。つまり、「国のメリット」という視点が自分のビジネスにはすっぽりと抜けていた。

そこで、「国の立場から見て、ぜひ推進して欲しい事業とは何か?」「今、国が一番困っている課題は何か?」を、政治家やキャリア官僚などと議論をしながら、私なりに考え抜きました。

その答えが、日本の財政破たんをベンチャー・ビジネスで解決することでした。それが、「富裕層マネー500兆円で日本の経常収支を黒字化する」というコンセプトです。これを具体化するため、金融当局から1年以上かけてライセンスを取得し、アブラハム・ウェルスマネジメント株式会社を2015年に立ち上げました。

いまの日本は、債務超過400兆円超で世界最大の借金国です。借金は増え続けるのに人口は減り続けるため、借金返済のあてが無く、遅かれ早かれ、大増税で国民からお金を搾り取るしかない。これは国民の多くに痛みを強います。

アブラハム・ウェルスマネジメントのサービスは、富裕層の海外投資を促進し、長期投資で財産を2倍以上にすることを狙うのですが、元本確保型の運用なので、最悪の場合でも、元本以上で“黒字”になって本人に還ってきます。

つまり、このアブラハムの顧客を増えれば増えるほど、富裕層マネーの海外投資の流れが太くなり、海外からの稼ぎが増えることで、日本の経常収支を黒字にできるわけです。

日本の財政問題を解決し、アブラハムの顧客である富裕層も海外投資で儲かり、自社も大きく成長できて、国民も痛みを伴う増税から解放されて、日本全体が豊かになる。これが「四方良し」です。

「昔、まだ小さい頃のアブラハムが日本の財政悪化を食い止める新規事業を始めたおかげで、今の日本があるんだよ。」と次世代の子どもたちに言ってもらえたら、起業家冥利につきますね。「社会的課題を解決する21世紀の財閥」を目指して、正道を歩みながらコツコツやっていきたいと思っています。本日はありがとうございました。

ーーこちらこそ、お忙しい中ありがとうございました。

高岡壮一郎さんのブログはこちら。

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HRマーケター/複業研究家。30歳@三児の父。2015年6月、リクルートキャリア在籍中に「二兎を追って二兎を得られる世の中をつくる」というビジョンを掲げ、株式会社HARESを設立し、代表取締役社長を務める。NPO法人ファザーリングジャパン理事