「ゲームは子どもに悪影響?」と悩んだら教育経済学を学んでスッキリしよう。
先日「SPEEDA×アカデミーヒルズ 『注目業界の5年後を読む』シリーズ 5年後、日本の教育はどう変わるべきか?」に登壇されていた教育経済学者の中室牧子先生の著書「『学力』の経済学」がいよいよ発売されました。
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中室 牧子 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2015–06–18
NewsPicksのプロピッカーとして抜擢された当初からから注目し続けていた中室先生のご著書とあって、予約して購入して読みましたが、やはり非常に読み応えのある本でした。
ご自身のお子さんの子育てに悩まれている親御さんはもちろん、教育に少しでも関わる方であれば必読の書ですよ!
教育経済学とは何か?
中室さんの研究テーマでもあり、今非常に注目を集めている「教育経済学」ですが、従来の教育学と何が異なるのでしょうか?
「不思議なもので、教育という分野に関しては、まったくといっていいほどの素人でも自分の意見を述べたがる」という西内啓氏(『統計学が最強の学問である』著者)の言葉を引用し、教育は1億総評論家になりがちだと指摘します。
そうして「主観のかたまり」によって左右されがちな教育の分野に「原因と結果、すなわち因果関係を明らかにする」という経済学的な考え方を導入することによって、「どういう教育が成功する子どもを育てるのか?」ということを科学的に明らかにしようとする試みこそが、教育経済学の存在意義なのです。
「●●は子どもの教育にプラスか、マイナスか」という議論をするときに「自分の経験によれば」と主観的に語るのではなく、統計的に「因果関係がある」と言えるのか、「単なる相関関係にとどまる」を明らかになるまで徹底的に実験を繰り返すのです。
ゲームは子どもに悪影響を及ぼすのか?
そうして科学的なアプローチから子どもの教育にまつわるあらゆる物事の因果関係を明らかにしようと試みる中室さんですが、その立場ゆえ多くの教育者や保護者から相談を受けることも少なくないそうです。
その中でもよく受ける相談の一つが「子どもがテレビ、ゲームを利用する時間を制限すべきか?」というものだそうです。
厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」によれば、小学6年生の子どもは平日に2.2時間テレビを視聴し、1.1時間ゲームを使用しているそうです。
この事象に対して心配しているのは日本の保護者だけでなく、米CNNなども「暴力的なゲームをすると、子どもの問題行動が顕在化する」といった報道をしています。
これに対して中室さんはやはり「テレビやゲーム」と「子どもの発達や学習」の関係性が因果関係なのか、相関関係にすぎないのか、を明らかにしよう、というアプローチをとります。
「暴力的なゲームをすると、子どもの問題行動が顕在化する」という仮説が、
- 暴力的なゲームをすると、子ども問題行動が顕在化するのか(因果関係)
- もともと問題行動をするような子どもが暴力的なゲームを好むのか(相関関係)
のいずれにあたるのかを、統計的に明らかにする必要があります。
ではこれに対して教育経済学はどんな結論を出しているのでしょうか。
結論から言うと「テレビやゲームそのものが子どもたちにもたらす負の因果効果は私たちが考えているほどには大きくない」という研究結果がほとんどだそうです。
それどころか「幼少期にテレビを観ていた子どもたちは学力が高い」と結論づけている研究があるのだとか(シカゴ大学・ゲンコウ教授)。
ゲームについても「ゲームは必ずしも有害ではない」「ロールプレイングなどの複雑なゲームは、子どものストレス発散につながり、創造性や忍耐力を培うのにむしろよい影響がある」などの研究結果が出ているそうです(ハーバード大学・クトナー教授)。
つまり「ゲームの中で暴力的な行為が行われていたとしても、それを学校や隣近所でやってやろうと考えるほど、子どもは愚かではない」のです。
ゲームをやめさせたら学習時間は伸びるのか?
「ゲームが子どもたちにもたらす負の因果効果は大きくない」ことが分かったとはいえ、何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。
一日中ゲームやテレビばっかりだとついついコラ!ゲームを辞めて勉強しなさい!と叱ってしまいたくなりますよね。
そこで気になるのが「ゲームをやめさせたら学習時間は伸びるのか?」という疑問です。
研究結果によれば「テレビやゲームをやめさせれば、子どもの学習時間は確かに増える」らしいのですが、問題なのはその量。
なんと、1時間テレビやゲームを辞めさせたとしても、男子については最大1.86分、女子については最大2.70分しか学習時間が増加しないことが明らかになったのです。
テレビやゲームの時間を制限しても、子どもは自動的に机に向かって勉強するようにはなりません。
子どもが勉強に取り組む姿勢が変わらないのに、テレビやゲームの時間を制限したら、たぶんそれに類似する他のこと―スマホでチャットをする、あるいはインターネットで動画を観るなど―に時間を費やすだけです。
―「学力」の経済学(p.56)より引用
適度なゲームはちょうど良い息抜きになる。
もちろん、これは「テレビやゲームを無制限に見せても問題ない」ということではありません。
テレビ視聴やゲーム使用の時間が長くなりすぎると、子どもの発達や学習への悪影響が飛躍的に大きくなるというのもまた研究結果で明らかになっています。
1日に1時間程度であれば、まったくテレビを観ない・ゲームをしないのと変わらず、1日2時間を超えると、負の影響が大きくなるのだとか。
子どもが1日1時間程度、テレビを観たりゲームをしたりすることで息抜きをすることに罪悪感を持つ必要はありません。
「テレビやゲームは有害だ」というのは、その昔「ロックンロールを聞くと不良になる」といわれたのと同様、単に人々の直感的な思い込みを強く反映した時代遅れのドクマにすぎないのです。
―「学力」の経済学(p.57)より引用
実際わが家でも以下のようなルールを決めています。
- ゲームやマンガ、アニメは平日は最大1時間/日、休日は最大2時間/日
- 夜8時以降は原則禁止
- ただし、朝早起きした場合は7時まではゲームやマンガ、アニメはやり放題・見放題のゴールデンタイム。
このゴールデンタイム制度は長男の早起き習慣づくりに役立っていて、毎日誰よりも早く、朝5~6時には起きて「妖怪ウォッチ」やら「モンスト」やらをやっています。
親子で遊べるモンストがオススメ
Wiiや3DSのゲームも良いのですが、個人的には「親子で一緒に遊べるスマホゲーム」がお勧めです。
Wiiは自宅のリビングでやる分には良いのですが、外出先ではできないですし、3DSは一家に一台しかないので、一緒にはなかなか遊べません。
スマホゲームなら、自宅はもちろん外出先の待ち時間などでも親子で遊べます。
特にオススメなのが「モンスト」の協力プレイ。
その昔、千原ジュニアの千原せいじが「親子の仲を深めたかったら、スーパーマリオギャラクシーっすね!」ととある子育てイベントで語っていたのですが、「親子で協力プレイ」というのは親子の絆を強めますよね。
これなら、親のあずかり知らないところで変なゲームにハマる、みたいなこともなくて安心です。
長男は日々強くなっているのに対してぼくはあんまりプレイできていないので、長男の方が強いという屈辱はありますが(笑)
モンスト、オススメなのでまだプレイしていない方はぜひ親子で遊んでみて下さいね。
モンスターストライク
開発元:mixi, Inc
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教育経済学に興味があるなら読みたい2冊
「学力」の経済学
本ブログでもご紹介した中室牧子先生のご著書。必読です。
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中室 牧子 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2015–06–18
幼児教育の経済学(ジェームズ・J・ヘックマン)
2000年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のヘックマン教授は労働経済学の専門家ですが、教育経済学についても多数の著作を持つ「教育経済学の白眉」ともいえる研究者です。
こちらも併せて読みたいところです。
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ジェームズ・J・ヘックマン 東洋経済新報社 2015–06–19
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